引越し その後…

引越しをして初めて僕は新しい部屋で夜を過ごした。引越し 業者の方々に荷物を無事に搬入してもらった後、先立っているものの段ボールを開けながら、連絡してあった通りにガスや水道や電気を開通してもらう。そして大家さんに挨拶に行った。荷物を運び入れてもらう際にとりあえずのレイアウトを伝えてあったし、その通りに置いてくれたので初日からすっかり快適だ。ただ、まだ自分の家だっていう実感はないけど。

引越しをとりあえず終えて、改めてあのときの両親に感謝をする。照れくさいからわざわざあのときの話を持ち出してありがとうなんて言いやしないけど報告くらいしなきゃな、なんて誰にでもなく言い訳を一息頭の中で吐いて実家に電話をする。片付いたら新居にも遊びにくれば良いんじゃないか、なんて我ながらぶっきらぼうだ。言葉少なに電話を切って、すぐ始まる会社の事を考え始めた。

引越しは気分を一新するのにちょうどいい。会社の初日まで三日ほどの休みがまだあったので、次の日僕は今度はここの最寄りの区役所へ出かける。また僕は自分の名前の練習をして、新しい住民票と新しい原付のナンバーをもらい、その足で免許証の書き換えも済ませた。帰りはこの新しい僕の住まいの周りを歩いてみようと思い立つ。きっと良い町だ。今日はこんなに天気が良い。道行く店をいちいちのぞいて回り、良さそうな喫茶店も見つけた。

引越しの報告を仲間や知り合いに連絡する。手紙って事もないから味気ないメールで申し訳ないなと、久しぶりにのんびりと散歩して気分がすっかり旅番組のレポーターみたいになっていた僕は柄にもなくそんなことを思う。実際はメールでさくっと報告して終わらせたんだが、もし散歩の途中で気に入った便せんか書きやすそうなペンを見つけていたら、そのままはがきを買いに行っていたかもしれない。

引越しが終わると同時に、まるで僕はちゃんとした大人になったような気さえする。本当はこれからが本番で、社会人になって会社に行って、そこできちんと仕事ができるかにかかっているのはわかってる。ただこの一連の引越しの流れは徐々に僕を新生活に向けて知らないうちに心の準備をさせてその気にさせてくれた様な気がしたし、何より五年前よりは少なくとも大人になっただろうというささやかな自信がついた、とにやけている僕はきっとまだまだ未熟じゃないか。ああ。次の引越しの時にはこの事を思い起こして僕は何を思うんだろう。なんだか楽しみだな。引越し バンザイ。